重機備品と実験材料の各社の入札が終了すると、事務室の優紀は全てチェックし、
僕の作った(有)アジア衛材(*ペーパーカンパニー)として最低価格を少し下回った金額を記載し提出した。

もちろん、見事に落札に成功した。

その後、柳沢は入札に参加した会社に、アジア衛材として全て注文を出した。

品物を用意させると、柳沢と彼の恋人がレンタカーの大型トレーラーを使い、各社を回った。

中には納品を渋る会社があったが、遠回しに、アジア衛材は生体科学製薬の税金対策のトンネル会社だとほのめかし、実際その会社が生体科学製薬の入札に使用した時の書類のコピーを見せた。会社のお偉方は、態度が一変して一様に対応が良くなった。

柳沢は僕とは違ってこういう駆け引きをさせたら、水を得た魚、血を得たドラキュラだった。

そして、全ての会社に月末締めの(有)アジア衛材の手形を切って渡した。

荷物を満載したトレーラーを、柳沢はそのまま生体科学製薬に乗りつけた。

僕が最もらしく検品した。そして研究員を指示し、開いている部屋に納めさせた。

設置は、研究室の整理をするまでしなくていいと言い、品物と伝票の内容は合っているので請求通りの小切手を発行しなさい、と指示を出した。

小切手の額面は2億3千万円になった。

柳沢は当然のようにそれをカバンに入れると、当然のように去って行った。


僕は優紀の家に来ていた。