白木は一回うなると、「わかりました。倍率155倍の新発売の物を用意しましょう」

「確実に、月末前までにお願いしますよ」

「大至急、入札の業務に入るよう指示を出すよ」

「それから20億も、月末までにお願いします」

「それは、……もう少し時間をいただかないと……」

彼の一流のペースに乗せられてはいけないと思った。

「しかし約束は約束で、守っていただかないと」

「一口に20億と言っても大金だ。そんなに簡単にいきませんよ。来月にはかならず」

「話しが違いますね。それを社長は出来ると約束したわけですよ」

今月中に決着をつける必要があった。
「今月なら、いくらまで用意できるんですか?」

「えー、いま3億なら手元にあります」

僕は頭を抱えた。 彼の話は続いた。

「18億する10カラットのダイヤの指輪を付けるという案は、どうでしょうか?」

優紀から、未美が結婚披露宴のとき10カラットの“金星(ビーナス)の落とし子”とかいう、名のあるダイヤをしていたのは聞いていた。

でもそれはたしか12億と言っていた。…間違いない!…僕の刑期と同じだったと記憶している。なにが18億だ!……だいたいその12億自体も、疑わしいものだろうが………。 相変わらず汚い奴だ!

………しかし20億の一万円札というと、重さにして200kgにもなる。