「ちょっと、ここで待ってて」

彼女を椅子に座らせた。

「もう、先生は強引なんだから」

僕はドアまで大股で歩み、ドアノブに手を掛けたまま言った。

「その強引さに弱いくせに」

部屋を出ると、社長室に走った。

「社長!素晴らしい薬のヒントを得ました。すぐ見に来てください」

と、息を切らして言った。

僕の切羽詰った、演技ではない演技に魅せられたように、白木は跳ねるように立ち上がった。

「わかった。すぐ行く!」

走る僕の後を付いて、白木も走った。

一気に研究室まで来ると、檻(おり)を指差した。

「これが何だかわかりますか?」

「…ただのモルモットにしか見えないが?」

「これは、癌細胞を移植したモルモットの群ですが、ホウセン菌から抽出したある物質を投与してあります」

「ホーッ!まるで健康体にしか見えないね」

「そうです。健康体にしか見えないでしょう」(本当に健康なんだよ!)

「何日経過してるんだね?」

「はい。以前から引き続き研究してるものですから、既に6ヶ月を経過してます」

「素晴らしい!早く有効性を立証してくれたまえ」