(まずい!?)早速、実印が必要のようだった。
僕は彼の前に立ちはだかった。
「あのっ首都銀行の方ですか?」
「はい。…あなたは?」
「私はこういう者です」
僕は研究室名誉顧問の名刺を出した。
「はっ いつもお世話になっております」
金子という青年は最敬礼した。
「株を売った3千万円を定期預金に組みたいのだが、話しを聞かせてくれないか?」
金子は一瞬、目を輝かせた。
「はい。少々お待ちください。白木社長との用を済ませて参りますから」
「残念だが、私には待つ時間がないのだよ。これからすぐ渡米の準備にかからなくてはならないのだよ」
「はい。…そういうことなら」
僕は一階にある小会議室に彼を案内した。
「しかし流石ですね。株は今後下がると思われますから、定期預金に組み代えるお考えは………」
「コホッ!」
僕は大きく咳払いをして彼の話を止めた。
「すまないが、ゆっくり話しを聞く時間がないのでね。印鑑が必要だね?すぐに戻るから、ここで待っていてくれたまえ」
「はい。わかりました」
僕はドアを閉めると、受付けにある電話で優紀に連絡をとった。
「はい。事務室です」

