青春を取り戻せ!


待つこと12分後の11時27分、山口は外に出て来た。

優紀は敏速に社長室に忍び込み、デスクに備え付けの引き出しを例の合鍵を使って開けた。

しかし、その中に小さな金庫があり、それは開かなかった。

しかたなく、上着を脱いでそれを包み、持ち出した。

比較的利用者の少ない6階のエレベーターの前で待っていた僕は、それを受け取り、自分の上着に包み替え、柳沢のアジトに走った。

柳沢はそれを受け取ると、針金を使って瞬時に開けた。

中から、印鑑証明と実印が出てきた。

出資払込金の領収書に押印すると、僕は役所に急ぎ、印鑑証明書を出してもらった。

外から、そのことを優紀に連絡すると、社長はもう戻っているということだった。

………焦る事はない。印鑑証明と実印が必要なことはそんなに頻繁にはないだろうから、隙をみてゆっくり返せばいいと思った。


僕が手下げ袋に入れた金庫を持って、一階の受付けに着くと、マネキンと話しをしている男に出会った。

男は8階のインターホンを押した。

「どちら様でしょうか?」
秘書の山口の透通った声が響いた。

「はい。首都銀行の金子ですが、手形の書き換えで、社長に署名捺印をしてもらう必要がありましてお伺いしました」

「社長は在宅です。重役専用のエレベーターでおこしくださいませ」

「はい。わかりました」