青春を取り戻せ!

キンコン! キンコン! ……

天井からお昼を知らせるチャイムが鳴った。

僕は張っていた肩の力が抜けるのを感じた。

白木の出た少し後に退室した。

更衣室を出た所で、背中に硬い物を突き付けられた。

「ホールドアップ」

僕は両手を上げた。

「私よ」

掃除婦の格好をした埃だらけの優紀だった。

「掃除のおばさん、どうしたの?そんなに汚れちゃって」

「大変だったのよ。上着をロッカーの中に落としちゃったので、中に入って暗闇で作業をしたんだから」

「ご苦労さん。残りは後でたっぷり聞かせてもらうよ。それより例の物」

「はい」

僕は茶色の紙袋を受け取ると、昼休みを返上して柳沢のもとに急いだ。


翌々日、優紀は秘書室のホワイトボードに書いてあった◎“昼食のマーク”と、秘書の話から、白木が得意先のドクターを昼食接待するのを調べていた。

念の為、白木の車が駐車場にないのを確認すると、優紀は11時15分に社長の印鑑をもらいに行くと初老の事務長に告げて、秘書室のそばで、秘書の山口がトイレに立つのを待った。
……山口には朝、利尿剤を入れたウーロン茶の差し入れをしてある。そしてもし、作業に手間取り、トイレから戻った山口と鉢合わせしても、社長の印鑑の必要な書類を持っているのでいくらでもごまかせると考えた。