青春を取り戻せ!

「先生の真面目な顔から出る冗談は最高だ」
と言って、白木は大きな声で笑い続けた。

その後は、僕は青年の説明を聞いた。

「このケースは空中落下菌や浮遊塵媒などが目薬に混入するのを防ぐために、外気から完全に遮断されてます。しかも常に紫外線を照射して滅菌操作をしてます」

「それはわかります。それより今は何の研究をしているのですか?」

「はい。花粉症に伴う、目の腫れやかゆみにコンドロイチン硫酸ナトリウムとマレイン酸クロルフェニラミン、それとアズレンの他に、何の薬剤を入れるべきかの選択に掛かっています。そして………」

青年は塩酸テトラヒドロゾリン0.025%と書いてあるビンに、スポイトを差し込んだまま説明を続けた。

僕はあちこちを見て回っている白木の挙動が気になり、青年の話に没頭できなかった。

今、時間は先程から9分経過したところだった。あと11分で優紀がうまく作業を完了することを願った。

その後も白木を片目に入れながら、青年の話に適当に相槌を打つ作業に従事していた。

突然、電話のベルが鳴った。

青年が受話器を取った。

「社長!銀行の頭取がおこしになりましたので、すぐ社長室に戻ってくださいということです」

時間は13分経過したところだった。 これだけの時間で、優紀が作業を完了することは不可能だった。




優紀は暗号を受けると、目薬工場に走った。