スポイトを駆使して目薬の調合をしているようだった。
白木は、その青年の恐縮した目を見て言った。
「そのまま。…そのままでいいから、水島先生にここの説明をしてあげてください」
うなずく青年の肩を、白木は軽く叩くと、僕の隣にある電話に手を伸ばした。彼より先に受話器を取った。
「社長、電話ですか?」
白木は不可解な顔をした。
「あぁ?…秘書に、ここにいることを報告しておこうと思ってね」
「それでは私に掛けさせてください。丁度、あのチャーミングな秘書をデートに誘うついでがありますから」
「先生が冗談を言うとは思いませんでしたよ」
と言うと、白木は本当に愉快そうに笑った。
僕は電話に向かうと、事務室の優紀のデスクの短縮番号を押した。
「はい。事務室です」
優紀の声だった。
「どうもどうもすみません。間違えたようです」
僕は受話器を置いた。鼓動が速くなったのがわかった。優紀が無事にうまく行動してくれるよう心の中で手を合わせた。
この、『どうもどうもすみません。……』が、“すぐに作戦開始せよ”という合図なのである。
ちなみに『アッ!?ダイヤル・ミスミスです』が、“作戦の中止”。『おかしいな?』が“危険が迫ってる逃げろ”である。よくある2回コールなどというのは、席を外している場合もあるし、こちらからは確認ができないので不適と思えた。
白木は、その青年の恐縮した目を見て言った。
「そのまま。…そのままでいいから、水島先生にここの説明をしてあげてください」
うなずく青年の肩を、白木は軽く叩くと、僕の隣にある電話に手を伸ばした。彼より先に受話器を取った。
「社長、電話ですか?」
白木は不可解な顔をした。
「あぁ?…秘書に、ここにいることを報告しておこうと思ってね」
「それでは私に掛けさせてください。丁度、あのチャーミングな秘書をデートに誘うついでがありますから」
「先生が冗談を言うとは思いませんでしたよ」
と言うと、白木は本当に愉快そうに笑った。
僕は電話に向かうと、事務室の優紀のデスクの短縮番号を押した。
「はい。事務室です」
優紀の声だった。
「どうもどうもすみません。間違えたようです」
僕は受話器を置いた。鼓動が速くなったのがわかった。優紀が無事にうまく行動してくれるよう心の中で手を合わせた。
この、『どうもどうもすみません。……』が、“すぐに作戦開始せよ”という合図なのである。
ちなみに『アッ!?ダイヤル・ミスミスです』が、“作戦の中止”。『おかしいな?』が“危険が迫ってる逃げろ”である。よくある2回コールなどというのは、席を外している場合もあるし、こちらからは確認ができないので不適と思えた。

