「そうなの?…でも、兄の言うには、あなたに教授との面会のアポをお願いしたいらしいの。
べつに薬の権利を兄の会社に委託するように頼んでくれとは言ってないのよ」
「…無理だよ。
研究費は大東京製薬が最初から出してるし、薬は完成してない」
「そうよね。ごめんなさい。今言ったことは忘れて」
…それ以上その話題は出て来なかったが、その時にどうしてこの計略に気付かなかったのだろう。―――――
僕は完成した試薬を教授に渡すと、
「今日は早めに帰らせて下さい」
と、お願いした。
彼は小さな声で、
「今度のゴルフは負けないからな」
どうもゴルフ練習場に行くと思っているようである。 でもその話題が出るということは、今日は機嫌がいいなと思った。
思い切って、未美に頼まれたことを聞いた。
案の定、教授は、
「大東京製薬を裏切るような真似は出来ない。それに第一、君の月々の給料は、大学は1銭も出してないんだよ。すべて大東京製薬から貰った研究費の一部から出てんだよ」
と、小さな声で言ったが、明らかに憤懣(ふんまん)がこもっていた。
僕にはもちろんそれ以上の事は言えなかった。
家に帰ると、隣の小学6年生の桂 優紀(かつら ゆうき)がいた。
勝手に庭に入り込み、ミニスカートをひるがえし、ボン(小犬)と遊んでいた。
べつに薬の権利を兄の会社に委託するように頼んでくれとは言ってないのよ」
「…無理だよ。
研究費は大東京製薬が最初から出してるし、薬は完成してない」
「そうよね。ごめんなさい。今言ったことは忘れて」
…それ以上その話題は出て来なかったが、その時にどうしてこの計略に気付かなかったのだろう。―――――
僕は完成した試薬を教授に渡すと、
「今日は早めに帰らせて下さい」
と、お願いした。
彼は小さな声で、
「今度のゴルフは負けないからな」
どうもゴルフ練習場に行くと思っているようである。 でもその話題が出るということは、今日は機嫌がいいなと思った。
思い切って、未美に頼まれたことを聞いた。
案の定、教授は、
「大東京製薬を裏切るような真似は出来ない。それに第一、君の月々の給料は、大学は1銭も出してないんだよ。すべて大東京製薬から貰った研究費の一部から出てんだよ」
と、小さな声で言ったが、明らかに憤懣(ふんまん)がこもっていた。
僕にはもちろんそれ以上の事は言えなかった。
家に帰ると、隣の小学6年生の桂 優紀(かつら ゆうき)がいた。
勝手に庭に入り込み、ミニスカートをひるがえし、ボン(小犬)と遊んでいた。

