青春を取り戻せ!

再び力を込めて抱き締めた。

「君のこと、なにがあっても守ってやるから・・・」

「ありがとう。嬉しいわ」

その後、僕らはベンチに腰を下ろした。

彼女はさっきから何か考え込むこような表情を見せている。

「もし悩みごとがあるのなら、言ってごらん。君の力になりたいんだ」

「ありがとう。別に何もないわ。ただ……」

「ただ、何なの?」

「駄目だったらいいのよ。…兄の会社、医家向けの薬、一年前から手掛け始めたの知ってるでしょ?」

「うん。君から聞いたよ」

「でも既存の薬を名前だけ変えて売ってるだけだし、セールスの数も少ないから売上げは伸びないのよ」

「いわゆるジェネリックメーカーだね」

「うん。それでどうしても新薬が欲しいらしいの?…私は駄目だと断ったんだけど、…どうしても兄が聞いてくれって」

「えっ 何を?」

「あなたの所の教授、老人性痴呆症の画期的な治療薬を開発したでしょう?」

「あぁ週刊誌に載ってた薬ね。
あれは全然完成してないよ。
ただ緒(いとぐち)が見えてきただけのことを、週刊誌がオーバーに取り上げただけだよ」

僕はここまで聞いても彼女の言わんとすることがわからなかった。