試験管に取ったペプシンに希塩酸を大急ぎで、しかも正確に調整しなければならない。
僕はピペットを使って希塩酸を吸い上げた。
…今日は初めて家に彼女が来てくれる日なのだ。ちょっと早めに帰って、万年床や散らかされた部屋を片付けようと思っていた。
「アッ!?」
口の中にピリッという刺激とすっぱさが広がった。
ピペットから希塩酸を吸い込んでしまったのだ。
蛇口に飛んでうがいを繰り返した。
その時、二日前のキスを思い出し、ひとりでニンマリした。
( 今日は塩酸で消毒したから、口臭除去剤 使う必要ないな )
( あっ そうだ!?約束果たしてなかった… …)
―――――キスの後、彼女は公園の暗闇で顔に手をあてて泣いていた。
僕は泣かれる理由がわからず、只々うろたえていた。
「ごめん。嫌ならもうしないよ」
「そうじゃないの。…びっくりしたの。あまり突然だったから」
「ごめん」
「違うの。…嬉しかったの。…感激して、何か心の中にピンと張ってた物が飛んで行っちゃったような気がしたの。…もう大丈夫よ」
今どきこんな純情な女(こ)がいるのか!?と、僕も感激し、彼女を見えない困難から守ってやりたいという理由のない原始の心が燃え上がるのを感じた。
僕はピペットを使って希塩酸を吸い上げた。
…今日は初めて家に彼女が来てくれる日なのだ。ちょっと早めに帰って、万年床や散らかされた部屋を片付けようと思っていた。
「アッ!?」
口の中にピリッという刺激とすっぱさが広がった。
ピペットから希塩酸を吸い込んでしまったのだ。
蛇口に飛んでうがいを繰り返した。
その時、二日前のキスを思い出し、ひとりでニンマリした。
( 今日は塩酸で消毒したから、口臭除去剤 使う必要ないな )
( あっ そうだ!?約束果たしてなかった… …)
―――――キスの後、彼女は公園の暗闇で顔に手をあてて泣いていた。
僕は泣かれる理由がわからず、只々うろたえていた。
「ごめん。嫌ならもうしないよ」
「そうじゃないの。…びっくりしたの。あまり突然だったから」
「ごめん」
「違うの。…嬉しかったの。…感激して、何か心の中にピンと張ってた物が飛んで行っちゃったような気がしたの。…もう大丈夫よ」
今どきこんな純情な女(こ)がいるのか!?と、僕も感激し、彼女を見えない困難から守ってやりたいという理由のない原始の心が燃え上がるのを感じた。

