その後は僕の見た光景に発展していたのだった。
その3週間後、僕と柳沢は看守の命を助けたことと、真面目な勤務態度が評価され、表彰を受け、2年の減刑を思い掛けず受けていた。
そしておまけに、刑法28条の“改悛の状”が適応され、3年早い仮出所の通達をもらった。
つまりこのまま問題を起こさずに勤務すれば、刑期より5年早く出られるのだ。
さらに思い掛けなかったのは、僕がボス格の男を一撃で倒したのが噂になり、今まで僕に批判や敵意を持っていた奴らの態度が豹変し、鄭重(ていちょう)になったことである。
…腕力がものを言う低俗な世界のようで情け無いが、まぁ何にしても、ここでの生活が楽になったことは歓迎すべき事態だった。
その後、喜び勇んで優紀に5年の減刑のことを報告した。
彼女はあまり嬉しいので、一人で飛び上がり、広げた指を壁にぶつけ、突き指をしてしまった。それに、あなたの好きなエリック・クラプトンのブルースを聞いても、いつもなら泣けてくるのに今日は妙におかしくてしようがなかったという表現で喜びを表してくれた。
そして、赤飯を作ったのだけれど、面会に行っていいかしら、と、もう何十回目にもなるおねだりをしてきた。
僕は何十回目かの断りを書いた。
中学生だった彼女が20歳の乙女に成長した姿を見たいのはやまやまだったが、不愉快な香水の立ち昇る薄汚れた灰色の獄衣を着て、トラガリの醜い坊主頭を看守に乱暴に撫ぜられる姿などとても見せられたものじゃなかった。
…特に、彼女には見せたくなかった。
僕は別の意味で、5年早い仮出所は千涯一偶のチャンスと考えた。

