…雨の日も風の日もボロボロになって探し回っているボンの姿を思い浮かべると、優紀から伝染したように、目に熱い物が……。


僕はボンの捜索と優紀の配慮に感謝の気持ちと、君の今の気持ちはたんなる感傷と同情で、高校、大学に入り、社会に出て、色々な男性と巡り合うことによってそれがわかる、というようなことを書いて送った。

―――― ごめんなさい。ボンはまだ見付かりません。もうすぐ冬になるので、ボンを大事にしてくれる人に飼われていることを願わずにはいられません。

もし私がタツローの言うように、これから色々な男性と出会い、知り合いになって、それでもまだあなたのことが好きなら、その時は結婚してくれますか?

タツローが出所して来る時には、私は27歳になっています。…その時まで一生懸命勉強してタツローに認められるようなりっぱなレディになっていますから……。

こんなことを書いたら嫌われるかも知れませんが、私はタツローが死刑にならないよう毎晩お祈りを続けていましたが、それとは別の意味で、懲役になったことを喜んでいるのです。

無実になると、タツローはあの綺麗な人と結婚してしまったことでしょう。

…タツローの気持ちを一番に考えれば、そんなことを考えるのはいけないことだし、タツローの悔しくてたまらない気持ちや失意もわかってるつもりです。が、心のどこかでこの事態を歓迎している自分が確実にいるのです。

タツローは呆れ、怒りさえ持つかも知れませんが、これが私なのです。自分でも不可解な心を持つ、これが、私なのです。手をこまねくことしか出来なかった私が、今はタツローを独占出来たのです。

私は天国に行けないでしょうね。人の不幸を喜ぶなんて、…自己嫌悪と自己陶酔の板ばさみにどうしていいかわかりません。