屋上から玄関に続く階段を降りてゆく。


黒髪に掴まれた腕がどうしょうもなく熱を帯びている。


胸がザワザワする。


行き場のない感情が心の中でグルグルと渦巻いていた。


とうとうそれに耐えられなくなって、



「手、離して」



少し震え声で尋ねる。


でも黒髪の答えはもちろん、



「手離したら逃げるだろ」



と、余裕たっぷりの表情でそう告げた。


なんか悔しい。


こっちはさっきからハラハラしているというのに。


まぁ、私が勝手に変になっているだけだから相手に罪はないんだけど…


とは言えずっとこのままはダメ。


私がもたないから…っ!!


1度深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。


そうして次は声を震わせることなく、



「逃げないから」



と、はっきり言ってやった。



それでもまだ「絶対か?」なんて疑ってくる黒髪。


いつまでも終わらない言い合いに少しイライラしたながら「うん」と返す。