「銀羅、ですか」



呟かれた翼の言葉は誰も拾うことなく消えていく。


どこまでも沈んだ空気の中、さすがに希龍メンバーもただ事ではないのを感じ取ったらしい。


今ここにいる全員の表情。

"焦り"、"不安"、"戸惑い"、色々な感情が複雑に絡みあってる。


……こうさせたのは私なんだけど。



「希龍の皆は知らないよね」



そんな重い空気を少しでも軽くしようと出来る限り明るく振舞ってみる。


今更、少し微笑みながら。



「美希。無理しなくていいから」



無駄だなんて分かりきってたのに。


凛の口調が変わったことに驚くこともなく、ただ真剣に向き合ってくれてるという事実が嬉しくなる。



「大丈夫だから」



少し軽くなった心で今度こそ微笑む。



晴れることのない雰囲気の中、今でも忘れる事など決してない現実を告げる。