「翔」



タイミングよく開く理事長室の扉。


出てきたのはもちろん鉄ちゃん。



「続きは中で話そう」



そう私たちに声をかけた鉄ちゃんの表情はやっぱり歪んでいて……


今更、問い詰めなければよかったと後悔しそうになる。


その思いは理事長室の中に入っても消えることなく、どんどん重くなっていく空気に押し潰されそうになる。



「怒ってる?」



そんな空気にとうとう耐えられなくなった私は思わずそんなことを聞いてみた。



「怒ってないさ」



「いつかは話さなきゃいけないことだったんです」



いつかは話さなきゃいけないこと。


その言葉にどんどん疑問が募る。


何故、今まで言わなかったの?

何故、そんなに深刻そうな表情で?

何故、話し始めないの?


言いきれないくらいにたくさんの疑問が頭の中でグルグルする。


でも、その答えは次の言葉で全て分かった。



「動き出したんだ。銀羅が」