そんな話の後だ。

食事も満足に出来ず翌日。

何時もの朝。

何時もの7時半。

この時間に鴉弥と生月が

迎えに来る。

鴉弥とどんな顔して会えば良いか

困りながらも玄関前で待っていると

「華世、早いな」

クールな生月。

何時も通りだ。

「生月…」

そんな生月が羨ましい。

「華世、どうした?」

私が下を向いていると

顔を覗き込む生月。

「聞いた?鴉弥の事…」

恐る恐る聞いたみると

「何だ、その事か」

と軽く返事をされた。

「何だって…」

「これは、鴉弥の家の問題。

俺たちには関係ねぇよ。

普通にしてれば良いだろ」

言っている事は正しい。

「でも…」

「俺たちに何が出来る?

「また、仲良くしてください」って

言って、表向きは仲良くなる。

だけど裏では相変わらず。

意味ねぇんだ。

本人たちがそれで良いって事だろ?

鴉弥の事も考えないで」

「生月、言い過ぎじゃ…」

生月の背後に鴉弥の姿。

「鴉弥…そんなつもりじゃ無いよ!」

私が言うと

「…別に気にして無いよ。

だってそのまんまだもん」

「鴉弥…」

鴉弥は明るく笑った。

「酷いよねぇ…」

「鴉弥」

生月が声を掛ける。

その声で鴉弥は止まる。

「何?生月」

「無理するな」

確かに鴉弥は無理して笑ってる。

「生月…」

生月は毒舌だし

あまり他人の事は考えないで

モノを言う。

だけど他人の事を良く見ていて

少しの感情の変化にも

すぐに気付く。

生月の良いところだ。

「鴉弥、嶋村ってヤツ

クラスに居るよな」

少しの感情の変化に気付く生月の

最近の凄いトコは…。

「え?う、うん…」

「そいつ、鴉弥に気、あるよ」

好きな人を当てる事。

「プッ…は、生月凄…過ぎ…

鴉弥、良かったね」

思わず吹いてしまった。

「そ、そんな事無いよ!!」

鴉弥は慌てて否定する。

「嶋村くんに悪いし…」

「鴉弥は後ろ向きだな」

「え、酷い」

「…酷いのか?」

さっきまでの変な空気を

ガラッと変えた生月。

そんな幼なじみの生月は自慢出来る。

カッコイイし頭良いし

おまけに(少しだけ)性格良いし。

何も言う事無いよ。

此処まで良いんだ。

モテない訳が無い。

女子の間じゃ

「謎王子」とか言われてさ。

「あ、学校見えて来たね」

「ホントだ…」

「良く此処まで話続いたな、俺ら」

「だね」

朝日に照らされた校舎に

私たちは入って行った。