「ていうか、藍羅って呼ばないでよ」
「えー。いいじゃん?」
「やめて」
「チェッ。……あれ? なんか藍羅、いい匂い。もしかしてシャワー浴びてきた?」
クンッと髪の毛に鼻を近づけられて、ぞわっと鳥肌が立った。
やだやだやだ!
運ばれてきたばかりのあたしの生ビールをぐっと握り締め、彼の頭に浴びせようかと本気で思った。
「えー。藍羅もその気で来たんだ? 俺、すっげぇ嬉しい。もうさ、早く場所移そ?」
だから、あたしにはソノ気ないってば!
なんて思って顔を歪めているうちに、彼はあたしの生ビールを取り上げて一気飲みすると、立ち上がった。
行こ、って彼氏気取って手握ってくるとこが尚更むかつく。
迷わず振り払ったけど気にせずへらっと笑った野村なんて、大嫌いだって本気で思った。



