水色のささやき

陸上部の仲間のところへ戻っていくアヤの後ろ姿を見送った後、サトは会場を出る。
学生鞄の中から進路調査書を取り出し眺める。
サトは日本一の大学の医学部医学科へ進学を希望している。彼の学力からすればそこですら合格は確実であった。
「ここに入って、夢に近づくために学ぶんだ。」
東京にあるこの大学へ進学するためには、馴染みのこの村を出ることになる。
寂しくはあったが、夢への一番の近道であると判断してのことだ。
彼に迷いはなかった。
サトは家に帰ると、母に声をかけた。
「母さん、話があるんだ。」
「サト、どうしたんだい?」
「僕、東京の大学に進学したい。」
「サト、何をいってるんだい。勉強をしたいならいくらでも母さんはさせてやる。お金も心配しなくていい。けれど唯一、この地を離れることだけはしないでくれといつも言っているだろう?この近くには大学はない。大学進学はできない。本ならいくらでも買ってやるからやめなさい。」
「本で勉強するだけではなれないものがあるんだ。行けないところがあるんだ。叶えられないことがあるんだ。僕には叶えなければならないことがあるんだ。」