「でもー、こっちにも注意した方がいいんじゃない?」





そう言ってヒラヒラと振る女の手の中には、
見覚えのあるケータイ。



それはポッケに入れといたはずの俺の黒の
スマホ。



パーカーのポッケを触ってもやっぱりそこにはなかった。





「チッ…。いつのまに…」





スリかこいつ…。


いつのまにスったんだよ、この女。





「んに、これはあたしの特技なんだよね!」


「どんな特技だよ…」





ケラケラとよく笑う変な女。









──これが俺の裏切りのきっかけとなった
この女の第一印象。