「そうなんですか?」

 意外な言葉だった。

 成績がいいと自分で言うくらいだ。

 成績が悪くていけないわけではないだろう。

「だから勉強する気がしなくてさ」

「僕は学校に戻りますから、サボるなら一人で行ってください」

 彼女は唇を尖らせ、いじけたような素振りをする。

「分かったよ。行く」

 彼女は荷物を持ち上げる。

 僕は手ぶらで、彼女は荷物が二つ。

 ちょっと分が悪い。

 彼女が持っている紙袋のほうを取り上げた。

「何するの?」

「学校まで持ちますよ。どうせ手ぶらだから」

 しかし、学校に戻ったら数学の教師からあれこれ言われるのだろうな。

 そう思うと憂鬱だった。




 朝のホームルーム前には何とか到着したものの、担任である数学の教師からは軽く嫌味を言われた。

 すれ違わなければ言われなかったのだろうが、タイミングが悪すぎる。

 なんとなくため息を吐いた。