茉莉花の少女

「久司」

 前方から僕を呼ぶ声が聞こえた。

 前を見ると、林が振り向いていた。

 いつの間にか僕の足がとまっていたのだろう。

 そのとき、冷たい風が駆け抜けていく。

 彼女に最初会ったときみたいに、呼び止めるようなそんな風だった。

 振り向いた僕の視界の隅に鉄製の柵の合間から風にゆれる花の存在が映る。


 彼女の部屋に並んでいた花たち。

 この家に移り住んだときに植えたのだろうか。

 その後、どうしたのかは分からない。