「そうなんだ」

 彼女はそのときどんな気もちだったのだろう。

 そして、今はどんな気持ちでいるのだろう。

「だからあまり自分のことは触れないであげてくれって」

「めちゃくちゃ触れてないか?」

「まあ、お前だからいいだろう」

 変なことを言っていると思ったが、追求するのはやめた。

 そのとき、冷たい風が辺りを吹きぬけていく。

 もうこんなに寒い時期になっていたのだとそう気づいた。