だから普段の生活だけはあの女とかけ離れた生活を送りたかった。

 あの女とは違うとあがきたかったのかもしれない。

「仕方ないけど、今日の昼飯だけはおごるよ。約束だったからな」

「今日はいいや。あいつが一緒に食べようってさ」

 さっき別れるときに、さっそく昼飯の約束をすることになったのだ。

 三田は少し考えた表情をすると、口を開く。

「茉莉先輩は綺麗だから、彼女を好きだったやつらに僻まれるかもな」

「ないない。あの女ってかなりの変人だから」

「あの人が変人なんてあるわけないだろう。おとなしい人だと思うけど。さっきだってお前の影に隠れて」

 三田はうっとりとした様子で饒舌に語る。


 人の思い込みとは本当に便利なものだと思う。

 よほど都合のいいシーンしか見えていないのだろう。


 そのとき、教室の扉が開き、クラスメイトが入ってきた。

 その話は自然と打ち止めになった。