「無茶なことはしないでくれよ。後から迎えに来るから」

 そういうと、優人さんは部屋を出て行く。

 正直、こなければよかったと思っていた。

 彼を見なければ、ただ卑屈な想像をしていたらよかったからだ。

 優しそうな目をしたそれでいて鼻筋の通った人だった。彼の二重の瞳が、目元をより優しく見せていた。

「何か話があったんだろう?」

 彼に促されて思い出す。唇を噛み、彼を見据えた。

「僕のことを知っているんですよね?」

「茉莉の恋人だろう?」 

 彼は表情一つ変えずにそう告げた。

 僕なら絶対に言えない。

 そんなことを認めたくなかったからだ。