届かないものを願ってもむだだと。

「久司君?」

 でも、そんな軽々しく口にできなかった。

 口にしてしまうことで、自分がいかにろくでなしなのか分かってしまうからだ。

「今はできない。悪い」

 彼女は僕の体を抱き寄せていた。

 彼女の体がいつもよりも熱を帯びていることに気づく。

「ゆっくりでいいんだよ。話したくないなら話さなくていい。

でも、私はあなたの傍にいる限りいつでも話を聞いてあげるから。だから一人で抱え込まないでね」

 彼女の腕のぬくもりを感じながら、僕は頷いていた。