その匂いから逃れるために家出を考えたこともある。

 だが、十二、三で家出をしても補導をされるのが分かりきっていた。

 万が一、逃れきったとしてもその先に何があるかなどそのくらいの歳になれば自ずと分かる。

 だから決めたことがあった。嫌悪感を示しても何もない。

 自分で一人で生きられるようになるまで、どんなものにも耐えようということだった。

 聞きたくないものには耳をふさぎ、見たくないものは見えないものとして扱ってきた。

 ただそんな毎日をずっと繰り返してきたのだ。

 テレビの中の評論家は模範解答があるかのように生きないといけないという。

 だが、そんな人生に意味など見出せなかった。