「じゃ自己紹介を」
教卓前まで歩く。
視線が痛い。恥ずかしい。
「みっみみみ……水野、朋実です……」
噛みすぎだよ………。
と、自分で自分を突っ込む。
教室がまた騒がしくなる。
「水野さんは、じゃ、あの席ね」
先生に背中をおされ、空いている席に向かう。
窓際の一番後ろ。
途中すれ違った子たちが私の方を見ながら小さな声で何かこそこそと話していた。
「ほら、やっぱり」
「自殺とかすごいよね、私なら絶対できない」
どくん、と心臓が大きく音をたてる。
広まっている。
みんなしってる。
なんで。なんで。なんで。
前の中学の事故直後のことを思い出す。
『朋美、大丈夫?』
【同情してあげないと】
『お母さんもお父さんもいないとか可哀想』
【両親なくしたとかやばいよね】
『何かあったらおばさんに声かけてね』
【めんどくさい、なんで私が見ず知らずの子に……】
やめて。私に構わないで。ほっておいて!!
耳を塞ぎ俯く。
……忘れよう。
もう、前の私とは違う。
「みんな水野さんと仲良くするのよ。じゃHR終わり」
号令がかかり、私もまわりの人に合わせる。
先生がでていくと、みんなは騒ぎ始める。
私は、横向きに机に突っ伏し窓の外を見る。
優哉さん、何やってるんだろうな。
病室から見えるものとは当然違う風景を眺めそんなことを考えた。