「泣いてるかと思った」
憐ちゃんは私の頭をそっとなでた。
その仕草が、優哉さんと重なって、また視界がぼやける。
だけどぎゅっとこらえ、笑を作る。
「さっきまでね」
「ちょっと安心した」
憐ちゃんの優しさが心にしみる。
「好きでいるだけならいいのかな」
空を見上げて、ポツリ、と話し出す。
優哉さんのことはもう私は何も知らない。
さっき見た優哉さんだって、まるで別人みたいだった。
優哉さんも、私のことは何も知らない。
「私のことを助けてくたのは、今の優哉さんも前の優哉さんも変わらないから」
事故から助けてくれた今の優哉さん。
私の心を助けてくれた前の優哉さん。
「もう付き合えなくてもいい。でもせめて、好きでいることは許されるかな。優哉さんの幸せを願うことくらいは、いいかな」
憐ちゃんは私の言葉に何も言わなかった。
だから私は昨日と同じで
「帰ろうか」
そう声をかけた。