｢凛、ただいま。｣
｢まま、お帰り。｣
凛は玄関に勢い良く駆け出した。そして、母の膝に抱きついた。
｢凛ごめんね。寂しかったでしょ。｣
母が凛の頭を撫ぜた。
｢うんうん。大丈夫。だってママは凛のためにお仕事してくれてるんだもん。｣
｢凛....。よし、ご飯にしようか。食器ＴＶの部屋に運んでくれる？｣
｢うん。分かった。｣
凛は台所に向かいコップと箸をお盆に載せてＴＶの部屋に運んだ。
｢ママー、箸とコップ以外に運ぶ物ある？｣
凛は叫んだ。台所では母が料理をしだした音が聞こえる。
｢それだけで、いいわ。ＴＶでも見て待ってて。｣
｢分かった。｣
凛は、ＴＶのリモコンを手にとった。電源を入れてチャンネルを回す。今の時間は午後六時15分。どのテレビもニュースばかりだ。面白いの入ってないな....。その時ひとつの番組が目に止まった。カラフルな画質で赤いスカートを履いた少女が笑っている。
凛が思わず声をあげた。
｢マルちゃんだ！｣

小学２年生の凛はちびまる子ちゃんが好きだった。

そうか、今日は日曜日だった。

凛がマルちゃんに熱中していると母が机の上に鮭とご飯を並べた。

「いただきまーす。今日は久しぶりにお魚だ！」

すると母が神妙な面持ちで言った。

「ごめんね。いつも美味しいもの食べさせてあげられなくて....。」

母の目に少しだけ光が見えた気がした。どう答えるべきか幼い凛には分からずとりあえず、笑ってみせた。

すると母も笑った。

「よし！冷めないうちに食べよう！」

「うん！」

鮭は美味しかった。いつもよりずっと。