蓮が自分の立場を優先するはずがない。

こいつがどれだけ茉央ちゃんを大事にしてたか、どれだけ茉央ちゃんだけを想ってたか、俺は知ってるから分かる。

…そんなもんと比べんなってことだ。


「ユータ」

名前を呼ばれて少し躊躇いながら顔を上げると、蓮はまたさっきみたいに困ったように笑っていた。

「ごめん」

「…いや、俺こそごめん」

「分かってるよ、俺のこと心配してくれてんでしょ?」

改めて言われると何だか照れくさくて、目をそらして「それより」と話を変えた。


「…お前がそうするなら俺はもう何も言わないけど、上手くやれんの?」

「んー、どうだろ」

「どうだろって…お前大丈夫かよ。」

ほんとに心配になった。

高校時代や大学時代のゴタゴタが頭の中にいくつも浮かんでくる。

こいつの大丈夫は大抵大丈夫じゃなくて、何度か女に叩かれたりしてるのを見たことがある。

それでも言い返したり手を出したりすることはなかった。それは多分自分が悪いって分かってるからだと思うけど。