もともと教室では喋らなかったから、おかしいと思う生徒は1人もいない。

それがせめてもの救いだった。

周りからはいつもと変わらないあたしに見えてるはずだから。

あたしが篠原先生に失恋したことを知ってるのは、梨花だけ。


「席に着けー」

いつものようにダルそうな中村さんが教室に入ってきた。

その後ろから、篠原先生も。

先生が入ってきたのを見て、自然と視線を下に下げる。

…目が合うのが嫌だから。


「咲良、白城、お前ら今日ひま?」

「え?」

「今日面談の生徒がバイトらしいから。順番的に次お前らだし。」

入って来るなり挨拶もせずにいきなりそう言った中村さん。

何でこういう日っていつもあいてるんだろう。いつもバイトないんだよね。