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しばらくすると、中年のお医者さんが
病室に入ってきた。

「体調はどうですか?」
「特に、異常はないと思います」
「記憶はありますか?」
「はい」
「ならば、北川さんが巻き込まれた
自然災害についてご説明しましょう」

それからの話は衝撃だった。

そして、テレビを見て唖然としてしまった。

あの日、大きな地震があった。

私がいたとこで震度は5強を越えていたらしい。

幸い、津波の被害はなかったが、
まだ、多くの行方不明者がいるらしい。

そして、私がいたデパートについて。

地震被害は大きかったものの
火災はどこも起きてないらしい。

ということは……
あの火災は地震による物じゃなかった。

つまり……

「誰かが放火したと考えられているよ。
放火した跡がちゃんと残ってあったからね。
その犯人もちゃんと出てきたし、事件と自然災害の
最悪の結果となってしまったんだ」

私はその言葉に怒りを感じた。

遊び半分で、自然災害に見せかけて
一般の人を巻き込むなんて……

テロリズム以下じゃない……

私は唇を噛み締めた。

そして、私のこと……

私はあの後、病院に運ばれて
応急手術をしたらしい。

呼吸困難の原因はやっぱり煙を吸ったこと。

だから、今は何も問題ないらしい。

そして、もう一つ大きな問題があった。

「腕に違和感は無いかい?」
「あります」
「そうか、じゃあとりあえず包帯を外そう」

お医者さんはゆっくりと腕の包帯を剥がしてくれた。

そして、私の目に止まったのは……

「これでわかったかな、違和感の原因が」

私は何も言葉が出て来なかった。

「棚に挟まれたらしいね……
その衝撃で骨はもちろん折れた。
全治1ヶ月くらいかな……
そしてもう一つ。
頭を打ってその衝撃で少し神経が麻痺している」
「……え?」
「それにプラスして、腕を挟んで
筋肉が上手くはまらずに痙攣を起こしている。
これで、今腕が痙攣して何も使えないんだ」

私の腕は右腕だけ肩から下が痙攣している。

そして、大きな痣があの時を思い出させる。

「今のところ、回復を祈るしかない。
けれど、なかなか上手くリハビリが出来ない。
神経と筋肉、骨……全てが良くならないと
完治したとは言えない。
もしかすると、このまま一生
右腕が使えないかもしれない」

その言葉はあまりにも残酷だった。