《橘が気合い入れて浴衣着てくるのにお前はのうのうと私服か?女の子の気持ちわかってんの!?》


「ご、ごめん」


やっと話が見えてきた。

電話の向こうで隆太が「これだから童貞は…」とつぶやいたのが聞こえたが、否定もできないし無視をすることにした。


《俺の母ちゃんが着付けできるから、祭りの日は待ち合わせ場所に行く前に俺ん家集合な!》


そういえば、隆太のお母さんは美容師だったか。


「あー、うん」


《なんだその気の抜けたような返事は》


女の子をたてようとしている隆太は確かに正しいと思う。

でも橘と俺は隆太と桃子ちゃんみたいに付き合っているわけじゃない。