ねぇ、ぼくじゃダメなの【短】

「ふぅん。まぁ、真帆ちゃんならすぐに答えてくれないと思ってたから、いいよ。ただし、ぼくはもう遠慮はしないからね」

俊哉は一歩真帆に近付き、親指と人差し指で真帆の顎を持ち上げた。

「本当は、ここで強引に口づけしたいところだけど、そういうの本気で怒りそうだから我慢してあげるよ」

俊哉はそう耳元で囁くと、ヒラヒラと手を振って会議室から出て行った。

「夢じゃ…、ないんだよね…?」

一人残された真帆は、これが現実なのかどうなのか分からなくなっていた。

昼休みも終わり、社員全員が集まり仕事の再開。

真帆も俊哉も裕介も、それぞれが仕事をしていた。

マジメに仕事をしていても、ふと顔を上げた時に見てしまう。

今までは、裕介を見るとドキドキもしたけど、心も穏やかだった。

だけど、今日は違う。

どうしても、俊哉に目がいってしまうのだ。