「緊張してますか?」
外を眺めていたら、笹倉さんが話しかけてきた。
「はい。」
「・・・大丈夫ですよ。陽菜様には・・・。」
「・・・私には?なんですか?」
「いえ、何でもありません。」
「・・・。」
えっ、なに?
私には何があるっていうの?
特別頭がいいわけでもない。
運動神経だって平均だし、龍華学園には友だちもいない。
なんだろう、とても気になる。
でも、続きが聞けない。
聞いてはいけないような。
「今の事は出来れば忘れてほしいです。」
「・・・わかりました。」
「それから・・・何か問題や困ったときには僕に言ってください。」
「えっ?でも、笹倉さん忙しんじゃ。」
「陽菜様のためなら、飛んでいきますよ。」
笹倉さんは一瞬笑ったように見えた。
後部座席からはハッキリは見えなかったけど、いつもの作った笑顔ではなく本当の笑顔のような気がした。
なんだ、笹倉さん案外優しいじゃん。
「じゃあ、お言葉に甘えていろいろお願いしますね。」
「はい。」

