時計の針が、10時15分を指した。

今日は部活動がなく、蝉の声がうるさい程に響き渡っていた。
明日は河原で、年に一度の花火大会が開かれる。僕は同じクラスの心優と行く。
僕は、ずっと前から心優の事が好きだった。だから、明日。明日心優に僕の想いを伝えようと思う。それに明日は心優の誕生日だ。
だから、僕はプレゼントを買う為に近くのデパートへ行った。
デパートは、冷房が効いていてとても涼しい。僕はグッズ売り場の3階へ向かった。心優に買う物は元々決まっていたから、買い物はすぐ終わった。
グッズ売り場から出ようとした時、エレベーターが到着する音が聞こえた。
僕はエレベーターの方を見ると、心優とA組のせなが下りてきた。
なぜか、僕は隠れた。
すると、せなが、
「心優ってー、好きな人とかいるのー?」
と言っている。
僕は、正直知りたかったから耳を傾けて聞いた。
「えー、せなはー?」
と、心優が照れ気味で言っている。
そこで、せなが心優を焦らすように言った。
「心優が言わないと、私言わない!」
「えぇー、でも…」
心優は、恥ずかしいのか中々言おうとしない。
そこで、またせなが、
「組だけでも良いから教えて!」
すると、心優が口を開いて言った。
「私の好きな人は…3−Aに、」
僕は、その瞬間頭の中が真っ白になり周りの音が聞こえなくなった。
「心優がA組の…」
僕は、何が何だか分からなくなり心優達が話している事なんか無視して、心優達に見つからないようにコッソリ帰った。

*

デパートを後にして、歌炉は近くの公園に寄った。
「心優は、A組の人が…A組の人が好きなんだ…」
僕は、今に壊れそうになっていた。
ベンチに、座りながらそんな事を考えていた時、ふっとさっき買ったプレゼントが目に入った。
「ネガティブに考えずに、前向きに考えれば良いんだ。心優が、僕でなく他の人が好きでも、僕は心優の事が好きなんだ。だから、明日。明日、伝えるだけ伝えてみよう。」
僕は、そう言い残し家へ帰った。

けれど、歌炉はあの会話の後に続きがあった事に気付いていなかった。