俺の肩を掴んで揺さぶり起こそうとしているのは、多分、マスターだ。 寝たって良いじゃねぇかよ。 誰にも迷惑はかけねぇから。 目覚めがあの世だって、構わねぇ。 「信二!起きてっ!!」 誰を呼んでる? …ああ、俺? 起こすなよ。 漸く酔いが回って寝入りそうなのに。 「何で逃げんのよっ!このっ、ヘタレ!!」 ヘタレ…? 誰に言ってんだよ。 俺は、ヘタレなんかじゃねぇ。 好きな女が離れていったんだ。 こんな、仕事ばかりしか取り柄の無い俺から。 その女の幸せを祈って、何が悪い…。