「ちょ…ま、待って。それなら、たまたま顔合わせしたからって事にしようよ?」
「俺は別に、何でも構わないよ?
例え、君の婚約者としてでも。」
「へっ?!何言ってるの?!」
送別会に行くだけの話だったのに、どんどん話は反れていく。
どこまでが本気で、どこからが嘘なのかが分からない。
婚約者は流石に嘘の方だろうけれど。
そんな風に慌てふためく私を他所に、シュウジは飄々としている。
それすらも、楽しむかのように。
「このまま、嫁に来てもいいよ?
その方が、安心だし。」
「冗談を言わないでよっ。
私が本気にしたら、どうするつもり?!」
私自身、当然の事を言ったと思う。
なのに…
シュウジはシュウジで、まるで当然の様に覆した。
「俺。冗談を言ったつもりはないけど。
…もしかして、嫌?」
嫌な訳がない。
でも、あの一日しか過ごした事のない私に、そんな風に言ってしまえるシュウジが不思議でならなかった。
「だって…私達、あの一日しか…。」
「覚えていないなら、それはそれでいいよ。
俺は、引かないって言ってるの。」
そう断言したシュウジは
『君が、好きなんだ。』
と、真っ直ぐに私の目を見ながら告白した。

