「何で、…シュウジがここに居るの?」
シュウジの肩口で、唐突に問い掛けた私の質問に、ハハッと笑ったシュウジは、顔を上げて私の瞳を覗き込むようにしながら話し出す。
「以前から、ずっとこの会社に居たんだけどね?ハハッ。本当に君は知らなかったんだ?」
「シュウジが柳田部長だっただなんて…。
…こんなに近くに居たのに。」
「俺は殆んど出張ばかりだったから、まぁ…仕方ないのかもしれないね。君も係長の補佐役で部署に箱詰め状態だったみたいだし。」
「そ、そんな事まで知ってたの?
…社員数が多すぎて、知らない人ばかりで。」
会いたい会いたいと願っていたシュウジが、まさかこんなに近くに居ただなんて、気付かなかった自分を恨めしく思う。
知らなかった事を言い訳するように社員数の話を持ち出した私に、何故かシュウジは表情を緩めていた。
「でも、社の部長位は覚えておかないと。」
「ごめんなさい…。」
「社員の再教育が必要かもしれないね?
君は今後、俺の補佐役になるわけだし。」
『再教育』と言ったシュウジは、抱き締める腕の力を強めながら、少し乱暴に唇を重ねた…。

