私が部署に戻ってから暫くして、彼女はファイルを手にして戻って来た。
私の言った通りに、化粧直しもしっかりしてきたようだ。
白目の部分は、まだ赤みをさしていたけれど、
業務に支障はないだろう。
彼女は、頭を下げながら、私にしか聞こえない位の小さな声で
『…すみませんでした。』
という謝罪を述べた…。
一般的な先輩、後輩のやり取りではあるけれど、それでも、私にとっては嬉しい事。
不安に駆られながらも言われた事をやってのけた彼女を、誉めてあげたいくらいだった。
彼女から渡されたA社のファイル。
必要でもなかったそのファイルを開きながら、
仕事を少しでも早くこなさなければと思いながらも…
シュウジに会いたい…
その想いを胸に抱いていた。
2か月前に、たった一度きり。
他愛のない会話をしただけ。
互いの事なんて、殆ど知らない人。
それでも…
私は、温かい手の温もりを思い出しながら、
『…またね。』
と言ったシュウジの言葉を信じていた…。

