大人のEach Love



気のきいた言葉は言えないけれど、私が出来るのはここまで。
今更、良い先輩でいようだなんて、そんなつもりもなかった。


「…先輩になんか…分かるわけ…ない。」


絞り出したように、小さな言葉を口にした彼女に、私は
『分かるわけ、ないじゃない。
あなたが私の気持ちを分からないのと同じよ。
それとも…分かって欲しいの?』
と言葉を返すと、彼女はまた、涙を流し始めた…


「…きっと…彼は……あたしの事なんて…」


「…待って。それ、私に話す事じゃないわよね?彼に何か不満があるなら、彼に言いなさい。
二人で悩む話でしょ。」


彼女に何の不安があるのかは分からない。
ただ離れる事に対して不安になっている…という話ではなさそうで。

それなら、私が聞く筋合いはない。
二人で考えればいいんだから。


何の為に…私が…


そこまで思って、頭を振った後…


「部長には、私が頼んだ資料を取りに行きましたと言っておくから。資料室のA社ファイルを持って来て。…化粧直しも、してから戻りなさい。」


彼女に対してそれだけを言った後、私は来た道を戻り自席についた。