大人のEach Love



最初に給湯室を覗いて見たけれど、そこに彼女の姿はなかった。かと言って、あんな状態で休憩室には行かないだろう。

それなら、多分…


「…階段ね。」


あそこなら、普段使う人はそうそう居ない。
このオフィスビルの15階に位置する部署の人達は、出勤時以外エレベーターを使っているから。


給湯室に隣接している階段に来ると、階下に続く踊り場に彼女を見付けた。


泣いているのだろうか?
踞りながら、小刻みに肩を震わせている。


彼女に近付こうと一歩を踏み出した私。

だけど…

次の一歩を出すことなく立ち止まった。


何て言って声をかければいいのか、直ぐに思い付かなかったからだ…。


『大丈夫?』


大丈夫なわけがない。
彼と離れなければならないだろうから。


『元気出して』


私が言うべき言葉ではない気がする。
それに、そう言われた彼女は
『先輩に言われたくないです!』
と、きっと腹を立てるだろう。