聞こえたのか聞こえていないのかは分からない。
シュウジは何も言わなかったから。
ただ、
『コーヒーを飲んだらシャワー使う?
土曜日だけど、仕事は?』
と問いかけてきて。
「…うん。行かなきゃ…ね。」
「仕度が出来たら、会社まで送るけど。」
「ううん。コーヒー飲んだら帰る。」
化粧ポーチは持ってきてはあるけれど、化粧直しが出来る程度しか入っていない。
シャワーにしても…なんだかダメな気がして。
「それなら、自宅近くまで送るよ。」
「…ありがとう。」
短い会話だけを済ませて二人でリビングに戻り、インスタントのコーヒーを片手にしながら、もう片方の手はきつく握りしめ合っていた。
シュウジは多くを語らないけれど、その握りしめられた手から、まるで『頑張れ』と言われているような気さえする。
コーヒーを飲み終えるまでの数分間。
握られた手が離れる事はなかった…。

