「ううん。果物は何でも好き。
…ありがとう。」
シュウジからグラスを受け取り、躊躇なくそれに口をつけた。
くどさのない甘さ、ほのかな酸味。
細やかな果肉を感じつつ、舌先を炭酸がピリピリと刺激する。
「美味しい…。」
私がそう本音を漏らすと、シュウジは嬉しそうに頬を緩ませながら
『炭酸水で割っただけなんだけどね?
林檎に感謝しなきゃならないな。』
と、柔らかな口調で謙遜してみせた。
この部屋に脚を踏み入れた時、それなりの心の準備をしていたのに…
シュウジの会話に付き合いながら、穏やかな時を過ごした。
アップルサイダーを数口飲み進めた頃、
急に睡魔に襲われたのを覚えている。
熱く火照った頬がフェイクレザーのソファーに触れて『冷たくて、気持ちいい…』と呟いた事すらも。
私は、そのまま深い眠りに落ちたようだ。
ひんやりとした頬と、温かな腕の温もりを感じながら…。

