キッチンから戻ってきたシュウジは、両手にワイングラスを手にしていた。
ワイングラスに入っているからには、お酒の類いに違いない。
だけど、今はお酒なんて飲みたい気分なんかじゃないんだ。
「私…お酒は、もういらない。」
「これ、お酒じゃないよ?」
「…何で、ワイングラスに?」
私がそう問い掛けると、シュウジはハハッと笑いながら『雰囲気的に?』と、照れ臭そうな素振りをして見せた。
「じゃあ、これは何かしら?」
「アップルサイダーだよ。」
「…アップルサイダー?」
「うん。カクテルはわりと柑橘系が多いよね?
だから、気分を変えてみるのもいいかなって
思ったんだ。林檎があったからミキサーでさ。
炭酸水で割ったんだけど…。林檎は嫌い?」
確かに、レモンやライムとかの柑橘系が多いとは思うし、私が好んで飲んでいたのもある。
だから、そういう些細な心遣いが素直に嬉しかった。

