心がぐちゃぐちゃだった私は、この待ち時間さえ苛つきを覚える。
好きにすればいいんだ。
そう愚痴る反面、
好きにされたいと願っていたのかもしれない。
とにかく、何もかもを忘れたかった…。
どんな手段であったとしても。
忘れられるのなら、何だっていい。
あの人の温もりも。
あの人の所作も。
あの人の、偽りの愛情さえも…。
『愛してる』
『キミだけなんだ…』
『ずっと、俺と居て支えて欲しい。』
どれも嘘ばっかり…。
私の知らない所で気持ちを揺るがせて。
戻って来るならまだしも、貴方は…
『他に、好きな人が出来たんだ…』
その言葉だけを、私に残した。
同じ職場の先輩からは
『女は、船着き場みたいな物なのよ。』
と、聞かされた事があったけれど…
彼は、その船着き場すら寄らず、大海原に舵を取ったんだ。