慌てて、土方さんと俺は浪士たちに近づいた。
血は、一滴も流れていなかった。
こいつらを一瞬で片付けた人は、目の前に立っていた。
もう刀は鞘に収めてあった。
笠を深くかぶり、藍色の着物に黒色の袴を着ていた。
背丈は、それほど高くなく、むしろ低い。
「…この人たちの仲間、ではないな」
「違う」
ぽつりと紡がれた言葉を、即座に否定した。
「そう、それならよいのです。…もう少ししたら目覚めるでしょう」
それまでの口調とは打って変わって、丁寧な口調で話す。
「…あんた、何者だ?」
土方さんが険しい顔をして聞いた。
「見たところ、相当な腕前だが」
「それはありがとうございます。ですが、私は特に名乗るほどのものでもございません。ただの旅のものです」
「ほう…?」
土方さんの険しさが増した。
「そしたら、せめて顔だけでも見せちゃくれねぇか。何、これほどの剣術見せられたんだ、顔くらいは覚えておきてぇだろ」
「……………」
目の前の人は、何も言わずに笠をとった。
「なっ…」
土方さんが絶句したのも、無理はない。
俺だって驚いた。
笠をとったその人は、紛れもなく…
女の人、だったから。


