-藤堂平助-
「うわ~、桜が綺麗だなぁ。ねえ、土方さん」
「そうだな」
ここは京の都。
春だから桜は満開で、とても綺麗だ。
俺の名前は藤堂平助。
京の治安を守る、会津藩お預かりの壬生浪士組となってから、一ヶ月は経った。
俺は壬生浪士組の五番隊隊長。
そして、俺の隣を歩くこの人が、壬生浪士組の副長、土方歳三。
壬生浪士組には、他にも江戸からの仲間たちがいる。
「…平助」
「何、土方さん」
「なんだって今日は、お前とふたりで歩いてるんだ」
しかめっ面をして、土方さんは聞く。
「なんでって…明日お花見をやるから、その準備のためでしょ。手があいてる人が俺と土方さんしかいなかったから」
だから、場所を決めるために歩いてる。
「……ああ、芹沢さんが突然言い出したからか」
「そうそう」
芹沢さん……壬生浪士組局長、芹沢鴨。
酒を飲むと手がつけられなくなることがある、厄介な人。
「芹沢さん、花見の席で大人しくしててくれればいいんだけどねぇ」
「まったくだ。あの人のせいで、近藤さんの苦労が絶えねえ」
近藤さんは、江戸の試衛館というところで天然理心流を教えていた人。
俺たちはそこで近藤さんと出会い、この京まできた。