守ってくれた人は、お姉ちゃんと慕っていた人だった。
血の繋がりはない、どこから来たのかも知らない。
それでも両親が親切にしていたから、怪しい人ではなかったはずだ。
彼女が亡くなった後、何度かその場所へ行った。
争いなんてなかったかのように、綺麗になったそこを見て、母親は言った。
『あの方があなたを守り、そして亡くなったことを決して忘れてはいけませんよ。いつかご恩を返さねばなりません』
『でも、母上、お姉ちゃんは亡くなってしまわれました』
『いいえ、あの方は生きておられます』
母親の言うことが、信じられなかった。
確かにあのとき、彼女は事切れていた。
けれど、母親が嘘を言うとも思えなかった。
そのあとに、凛とした瞳で母親が言ったことは、忘れてしまった。
『彼女は、月華の乙女なのですから』